Dominique Nachi

誰でも分かるパフォーマンス・アート

パフォーマンス・アートって何?なんだか聞いたことあるけど、よく分からない。英語で横文字で何だか長い。海外から輸入された概念で日本には馴染みがない。なので、本日はそのルーツから作品の楽しみ方まで、世界のパフォーマンス・アートを一般の人でも分かるように解説していきたいと思います。

アート

そもそも皆さんはアートと聞くと、何を想像しますか?

例えば、モナリザ。とても有名ですね。この絵画は完成度や技術はもちろん、強盗事件、「描かれた女性は誰なのか」などという謎に包まれ、人々を魅了し続けています。また、例えば、葛飾北斎の富嶽三十六景。カメラのない江戸時代に、三角波を正確に描写する鬼才、その鮮やかな色彩と緻密な構造は、アート界における日本のルネサンス時代を築いたと言っても過言ではないでしょう。絵画だけではありません。日本を代表する芸術家、岡本太郎が制作した太陽の塔は、大阪万博のために建てられましたが、この彫刻を前にすると、みなぎる岡本太郎の精神力と太陽のパワーに圧倒されます。絵画、彫刻から発し、写真、映像、空間、様々なアート表現が試される中、パフォーマンス・アートも芸術の一分野として1960年代からアメリカを中心に栄えました。

パフォーマンス・アートの始まり

パフォーマンスとは体を使って表現する芸術形態のことです。ここでは5人のパフォーマンスアーティストをご紹介します。

その第一人者と言われるのがジャクソン・ポロックでしょう。

彼は大きなキャンバスにインクをまき散らした作品を大量に制作しました。これだけ見ると誰でもできそうですね。しかし、彼の頑固一徹、確信した顔を見て下さい。彼は知っていたのです、これはアートの革新的出来事であることを。彼はこれをアクション・ペインティングと言いました。これまでの絵画は作家が椅子に座って描かれていたのを、彼はキャンバスの周りを作者自身が「動く」行為それ自体に作品の価値を見出しました。パフォーマンスの始まりです。

パフォーマンス・アートの母

パフォーマンス・アートの母と呼ばれるのがマリーナ・アブラモヴィッチです。「The Artist is Present」というタイトルの作品では、美術館の中で彼女はただ椅子に座って、観客と対峙しました。その期間は毎日7時間、3ヵ月にのぼります。なぜこれがアート界において革新的だったのでしょうか?それは、この時代において絵画や彫刻などの物体的なオブジェではなく、アーティストが「存在する」こと自体が作品となったのがこの美術館において証明されたからです。

世界で活躍する日本人

パフォーマンス・アートの先駆者としてニューヨークで活動していた人物の1人が小野洋子です。ジョンレノンの妻というイメージが強いかもしれませんが、彼女はパフォーマンスの歴史においても重要な作品を残しています。例えばこの「Cut Piece」という作品では、彼女は仏のようにじっと座っており、観客は自由に彼女の服を切ってよいのです。このあやうい交渉において、観客とアーティストはいかに関わっていけるのか。身体という、それも女性的身体、日本アーティストとして、西欧とは異なる文脈において、パフォーマンス・アートの可能性を模索し挑戦し続けました。

細分化する世界、個人の可能性

アメリカを中心に発達したパフォーマンス・アートは世界でムーブメントが広がります。メキシコ在住のフランシス・アリスは巨大な氷の塊をただひたすら押してメキシコ市街を歩きました。最後には氷は解けて何も残りませんでした。膨大な労力が費やされても私たちの生きる社会は変わらない、という不条理が浮かび上がってきます。彼にとって、この不条理に抵抗することは「歩くこと」です。

それぞれのテーマ

Tehching Hsiehは台湾のアーティストで、彼は1年プロジェクトで知られています。1年間投獄して過ごし、1年間毎日1時間置きにタイムカードを押し続け、1年間野外でホームレスとなって暮らし、1年間女性とロープで繋がれたまま生活しました。彼の作品は身体が拘束されることで成り立ち、アーティスト自身は「時間をつぶし、自由に考える」ことがテーマです。

これから先、何ができるのか?

こうしてパフォーマンス・アートは世界各地で様々な試みが見られ、現代にいたります。パフォーマンスが難しく感じるのは、絵画や彫刻に比べて、作品が「行為」それ自体であるゆえ、記録としてしか残っていないからかもしれません。だからこそパフォーマンスは一時的で面白いとも言えます。

根本的にパフォーマンス・アートは身体を介するゆえ「生きていること」そのものです。私たちは何のために生きているんだろう?何が大切だろう?何を感じ、どう生きたいだろう?そのために動き、考えて、懸命に生きる。

パフォーマンス・アートという芸術の深みと面白さを知ることで、自己表現の楽しさや、考えることの楽しさを感じてもらえればうれしいです。

一般の人に分かるように、と言いながら、長く書いてしまいました。結局アートについては語りたいことがたくさん。それではまたお会いしましょう。




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