Dominique Nachi

なぜ現代、コツコツが大事なのか

なぜ現代、コツコツが大事なのか

【私が再定義するコツコツの本当の意味】

西洋×東洋思想in 現代

イソップ寓話の「ウサギとカメ」は有名な物語で誰しもが聞いたことがあると思います。足の速いウサギは余裕綽々でその慢心から居眠りを始めます。その間に足の遅いカメは着実に進み、ウサギが目を覚ましたとき見たものは、山のふもとのゴールで大喜びをするカメの姿でした。

この西欧の話は明治以降に「油断大敵」というタイトルで国教の教科書に掲載されたそうです。カメのようにどんな小さな一歩でも積み重ねることが大事だということが、日本でも古くから重んじてきたことは、様々なことわざに見られます。例えば、「塵も積もれば山となる」、「千里の道も一歩から」、そして私が好きな言葉の一つである老子の有名な言葉「大器晩成」。これは本来、「」ではなく大器「」成だったのではないかと言われています。成を免れるとは、要するに無限大の器は完成することがない。大成する者は成功を要しない、ゴールなどないことを意味します。

日本の教育は変わらないといけないと思います。現代アクティブラーニングという、生徒同士が主体的に学び合う方向へ、教育指針が変わっていることはとてもいいことだと思います。しかしそれは、従来の地味にコツコツ勉強する方法がダメで、アクティブにやっていきましょう、ということではないと思っています。アクティブに物事と関わるにしても、コツコツとアプローチするが大事だということが、今回私が伝えたいことです。

私が再定義するコツコツ、まずは肉体的方法論の視点からひも解いていきたいと思います。私はポールダンサーなので技を習得するためにたくさんの練習が必要ですが、それは日々の積み重ねが必要です。この技ができるようになりたい!と思って、基礎練習無しにいきなり形をまねて関節を痛めたことがありました。まずは負荷の無い状態で、正しいフォームを身に着けてから、徐々に身体を慣れさせていく。ここで私の定義する肉体的コツコツとは、体への負荷を分散させて、ケガのないよう安全に着実に体作りをしていく、いたって理にかなった方法なのです。

それでは知的コツコツにおいての話です。私はノルウェー語を勉強していますが、ある日突然話せるようにはなかなかいきません。脳は記憶すべてを保存しませんから、一日に学ぶ量を重要なものから振り分けていく必要があります。脳の所蔵庫へのインプットとアウトプットはさまざまなアプローチから時間をかけて着実に集積していきます。ここでいう私の知的コツコツとは、脳のサイクルを最大限に活用して、効率的かつ確実に知的可能性を広げていくことです。

そして最後に、人間関係においてもこのコツコツのアプローチの大切さを伝えたいです。私はマッサージを提供していますが、お客さまとは、一期一会、そしてその一度きりの出会いの積み重ねが、信頼間関係を築いていくものだと思っています。感謝、敬意、そのような人の徳は、日々鍛錬とともに積み重なっていくものだと思います。素晴らしい人徳を積み上げた人は、おのずと人に信頼され、与え続け、また導かれるものだと思います。人間関係においてのコツコツとは、私自身が世界という広い立場において、誠意をもって一人一人と関わっていくあり方です。

それではこの肉体的、知的、人間関係的コツコツ論において、コツコツというのが、右足左足を一歩ずつ進めて道を歩む、ということであれば、近道があればそこを通ったらだめなのか?近道があれば、そこを通ってみるのも面白そうではないか。突然変異あるいは昇華というのがあるのではないか?ある日突然、さなぎが蝶に変異することだってあるかもしれない。ただ近道を見つけるにしても、突然変異するにしても、そこまでにコツコツと築いた道があって初めて出会うものだと思います。

私たちは明日死ぬかもしれない。それではコツコツと積み上げても意味がないのではないか?カメだってウサギを抜く途中に死んだら、その努力は無駄だったのか?私はそうではないと思います。私はおのれの自己と世界に触れた経験の深さが人生の豊かさだと思います。そしてその豊かさとは、比較できるものではありません。自分の中に存在するものです。居眠りをしてしまったウサギの夢想は豊かです。カメは(私の勝手な絵的想像で)太陽の日差しを浴び、汗を潮風で冷ましながら、自身の体と向き合いながら、その一瞬一瞬を生きたという意味で、そこに豊かさがあります。結局、人生はレースではないのだけれども、自分自身とうまく向き合っていくためにも、どの時代においても私はコツコツを大事にしていきたいと思っています。

いかがだったでしょうか、私のコツコツ論。独断と偏見で言わせてもらいましたが、面白いと思っていただければ幸いです。それではまたお会いしましょう。ドミニクでした。




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