Dominique Nachi

褌は世界を救うことができるか




はじめに

 

突然ですがみなさん、褌!と言えば何を想像しますか?

男達の裸祭りお相撲さん歌舞伎の女形も褌を履いているといいます。このように褌は特別行事のものであって、あまり身近に感じられないかもしれません。しかし戦前まで褌は普通にみんな履いていました。それがなぜ消えたのでしょう?現代、密かに褌ブームが到来しています(少なくとも私には)。エロティシズム、引き締まる履き心地、シンプルな日本の伝統美。今回は褌の歴史をたどっていきながら、褌の素晴らしさについてお伝えしていければと思います。

 

人類最古の下着は?

 

人類最古の下着は古代エジプトのものだそうです。紀元前3000年前のエジプト王の下着が発見されています。あのツタンカーメン王も麻でできた三角形の下着で前後を隠していたといいます。

古代、人がパンツをはくのは「神様と交信するため」でした。そのためツタンカーメンのような王様にしか下着を履くことが許されなかったのでしょう。

まずは下着を履けることに感謝です。

 

褌の歴史

 

さて日本の褌の歴史をたどっていきます。

褌の歴史はとても古く、古墳時代の古墳から褌を締めた埴輪が出土しています。その後1400年前に書かれた「日本書紀」にも登場しています。以下は日本書紀の話です。

日本を創造した神様、イザナギは妻イザナミを亡くしてしまったが、諦めきれずに黄泉の国(あの世)まで会いに行きました。すると再会したイザナミは変わり果て鬼婆になっていました。イザナギは鬼になったイザナミに追いかけられ殺されそうになり、黄泉の国の出口に向かいます。そこでイザナミと口論となり、イザナギはありとあらゆる持ち物をイザナミに投げつけました。すべての持ち物を投げ捨て、裸一丁になったイザナギ最後に身に着けていたのが褌でした。イザナギは、褌を脱ぎ、イザナミに向けて投げつけます。投げ捨てた褌は「開齧神(アキクイノカミ)」と呼ばれる神様となりました。

 

このように日本神話の神様が褌を身に着けていたというのだから、褌はまさに日本のソウルパンツ!だといえましょう。褌を締めたクレイジージャパニーズの話だと思って読むと、日本書紀はまことに面白い物語です。

さて時代は飛び、戦国時代になると、死者を褌の有無で判断したらしいです。当時は布が希少だったので、身分の高い人しか身に着けていませんでした。褌は衣と軍と書きます。このことから戦争に身に着けることが漢字の由来だともいわれています。

江戸時代になると武士だけでなく、庶民も褌を締めるようになります。当時は下着ではなく作業服のようなイメージでした。だから町中を褌で歩くことも珍しくありませんでした。浮世絵褌を締めたおっちゃん達が道を歩いている絵をよく見ますね。

しかし時代が進み、西洋から外国人が入ってくると、「肌を露出することは恥ずかしいことだ」といわれるようになります。そして当時の偉い人は法律まで作って褌での外出を禁じ、それから褌は外で履くものではなく、内で履く下着となりました。

世界各地で植民地化が進み、いつその手が日本に及ぶのか分からない時代となります。当時の西洋列強の価値観ではお尻を出して歩く、そんなの獣と同じ、つまり人じゃないなんていう考えを持っていました。だからこそ日本も自分たちは野蛮な獣ではないと、はっきりと声を上げる必要がありました。「私たちはちゃんと服をきた人間ですよって。こうしてお尻丸出しスタイルの褌はますます姿を消していきます。

それでも戦時中は軍人用の下着として、支給されました。貧しかった日本でも、パンツだけは、身だしなみとして、通過儀礼のように褌デビューをして成人を迎えます。海軍の規律の中には、「褌を海には捨てていけないという規律がありました。なぜだと思いますか?褌はなかなか海に沈まないので、海に浮かんでいるところを発見され、艦艇が付近にいることがばれてしまうからだそうです。

こうして、「褌=戦争主義というレッテルが張られ、戦後、褌を履くことは禁止されました。本来、日本の伝統下着である褌は、現代では馴染みの薄いものとなり、祭りでバカ騒ぎするくらいしか公にその変態ぶりを発揮できる機会を失ったように思えます。

 

褌の良さについて

 

ではなぜ今、褌なのか。

それはエロティシズムを考えるうえで、私のルーツである日本をたどっていくと、褌にたどり着いたからです。そして、私は褌の良さを再発見しました。

褌の魅力① エロティック

褌の中でも六尺褌はきつく締め上げることで圧迫による性的快感があり、男装した時のような倒錯したエロティシズムを醸し出します。この羞恥心と快感ナルチシズムと陶酔感に結びつき、マゾヒズムを刺激します。稲垣足穂が「少年愛の美学」で述べているように、お尻が丸見えの褌は、人の体の中でも「最も愛嬌のある、福々しい、同時にいつまでも年齢を取らないような部分」であるお尻を、いっそう引き立てるものではありませんか?

褌の魅力② シンプル

虚飾性を排し、単純な一枚の布で全ての機能が完結する「潔さ」が、日本人が古来から持つ「美意識」と共通するものがあり、私はいいなと思います。飾り飾った黄金のパンツではない、真っ白な一枚の布を結ぶ、それ一枚で生きていく。そういう生き方がなんだか世界を救うような気がしています。

褌の魅力③ 生活の指針となる

褌は健弱な体には似合わない。たくましいく発達した体だからこそ、一枚の布だけで肉体の美しさが引き立つ。そういう意味で、体作りをしていく指針となります。相撲が毎日たくさん食べてお稽古に励むのも褌を締めるため。怠惰で不健康な生活に褌は不釣り合いなのです。SNSが発達して身体感覚を忘れかけている今だからこそ、生活を正す一つの道しるべとして、褌が活躍していく日がやっていくのではないかと、私は思います。

以上、私の褌愛の話でした。
お読みいただきありがとうございました。

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