Dominique Nachi

ベルリンのクラブシーン




Dj Red との再会

そのクラブハウスはSonnenallee通りにある、ベルリン市内から少し離れた辺ぴな場所にあった。コンクリートの暗い道を進んでいくと、真っ赤に照らされた廃墟のような地下に入っていく。誰もいないと思っていたベルリンの奥地に若者がたむろしているではないか。

またとんでもないところに来てしまった。僕は学生時代の韓国人の友人でDJでもある、Redに会いにやってきたが、それ以外誰も知らない。ここで新しく友達を作らないといけないのか。。テクニックは習得し始めていた。軽いノリでビールを乾杯し、”What up?“ Do you speak English?“から始めるとだいたい仲良くなれるものだ。

話した男性はコロンビア出身のSound Engineerで、彼からベルリンのクラブ事情についていろいろと聞けた。戦争以来、使われなくなった古い工場や廃墟をクラブに立て替えているらしい。だからアンダーグランド、アートチックで独特なベルリンのクラブ文化が発達した。だが最近はもっとお洒落な街にしようというベルリンの街改革で、こうした汚らしいクラブは5年後、10年後には無くなるかもしれないという。そう思うと、今のベルリンの時代を自分も共に生きている感覚に浸ることができた。

僕はRedを探しに、クラブハウスの中を見渡した。
すると、舞台の赤いライトの中で酔いしれるRedを見つけた。
久々の再会に僕らは抱き合った。

Can we talk?
Yes,sure.

2人で外の庭に出るとフレッシュな空気に川を見渡す幻想的な風景が広がった。僕らはテラスに座り、 5年ぶりの時間の間を埋めるように話した。

Red5歳上で33になったという。永遠に年をとらない天使のような彼女は、昔と変わらず英語と日本語を交えながら話を延々と繰り広げることができた。目まぐるしく夢の中で生きてるかのような彼女は、ノンストップで駆け巡る、昼も夜も、ずっと稼働し続ける強いメンタルをもっていた。

「そろそろ戻らないと。私の出番は4時だからね。」

と、言ってRedは戻って行った。

僕は朝まで踊り続けた。ハウスの良さを始めて分かったのはこのクラブかもしれない。それは僕が今28という年齢になってようやく自分自身のために楽しむという感覚を理解し始めたというのもあるだろう。

ハウスは目をつぶって踊れる。ただ鼓動とチカチカするライトの中で恍惚感に浸ることができる。うまく踊る必要はない。人に見せるためではなく、自分のための時間がそこにはあった。

ただ酔いしれる場所がハウスである。

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